【監査法人2年目の感想】主査のタイプ紹介

監査法人の話

皆さんこんにちは働きながら公認会計士試験に合格したsuiです。

この記事は僕も監査法人に勤めて早2年目に突入し、いろいろなチームにぶち込まれた経験をもとに作成した上司のタイプ別分析の記事となります。

監査法人のスタッフは複数のチームを1週間~2週間くらいのスパンで漂流しますので、一般事業会社と比べて経験する上司の数が半端ありません。

仕事の傾向別の分析なので監査法人に限らず当てはまると思います。是非読んでみて下さい。

この記事はこんな人に読んで欲しくて書きました

・勉強の息抜き

・監査法人に入ったらどんな上司がいるんだろうって気になる人

・既に監査法人で働いており、現在の上司とうまくいっておらず悩んでいる人

あくまでフィクションとして楽しんでいただけると助かります…!もし主査経験者の方が読む場合は「ヒヨッコが何かいってんなぁ」くらいの気持ちでお願いします…!

誠実な主査

【総括】
表題のとおり監査に誠実に向きあうタイプの上司です。
完全に偏見ですが女性の主査が多い気がします

結構プロセス重視の傾向があり、時間的制約や心理的な制約を理由に監査手続きを妥協することをよしとしません

また、監査という仕事・仕組みが好きな人が多い印象です。一緒に働くと「監査」自体を好きになれます

このタイプの主査には
エクセルのシート数がおおい
リファレンス(調書間の相互の参照)、計算チェックが多い
結構な長文でメールやチャットが来る

とにかくしっかりと監査をやるんだ…!という誠実性が伝わってきます


といった特徴があります。初動の判断基準にしてみて下さい。

【このタイプのチームのメリット】
・相手を思いやれるタイプの人であり、暴言や行き過ぎた指導を受ける可能性は低い
・平常時のチームの雰囲気が良い
人間的に上司を好きになれるので指示が自分の中に入ってきやすい

【このタイプのチームのデメリット】
繁忙期になると主査のメンタルが壊れていく
どんなに実力がある方でも、あるべき理想の監査の前には現実的な問題が立ちはだかります。誠実でまじめな主査ほど、やりたい理想の監査手続きと目の前の現実のすり合わせが上手くいかず、心が削られていきます

そしてそれを直近で見ている監査チームメンバーのメンタルも削られていきます

割り振られる手続き量が単純に多い
まじめな主査程、検討を網羅的に行う傾向が強く作業量が膨大になりやすいです。
しかし、手続きの理由を聞いてみると「なるほど…」と考えさせる意図が込められている場合も多いので余裕があれば聞いてみて下さい。

時に信仰心を強いられる
このタイプの主査がチームを鼓舞する際の手法は
監査制度への忠誠心を高める説法」を行うことです。

どんなに時間と体力がきつくても国民経済の発展に資する役割を担っている公認会計士は妥協するべきじゃない。もう少し頑張ろう!!

みたいな感じのことを話してくれます。これは共感できる派と拒否反応を起こしてしまう派にガッツリ分かれるので、人によってはこの雰囲気が「厳しいな…」人もいると思います。

【このタイプの主査と仕事をするときに意識すること】
とにかくコツコツ信頼を獲得していく。このタイプの主査の下では可能な限り丁寧に行ってください。

どこかで一発ドカンと活躍すれば信頼を得れる上司ではありません。

基本的に優しいので勘違いしがちですが、監査手続きで手を抜いていると感じられると怒りと失望とともにチームから外されます。とにかく目の前の監査に誠実・全力で臨んでいる雰囲気を主査に感じさせ続けることが大事です。

監査先にも愛着を持っている人も多い為、ディスるような冗談もなるべく控える
表面上は特に問題なくても禍根が残ります。控えましょう。

監査手続きについてこまめに相談する
かなり喜ばれます。「もっといい監査を行うために、一応手続きの趣旨を確認させてください…!」と言えば悪い顔はしません。

もともと監査が好きなうえに、このタイプの主査はチーム(仕事)に尽くしたいという欲求も持ち合わせています。

手続きに関する質問は、上司からみると主査(自分)が考えた有効な監査方法を他人に説明できる機会でもあり、チームメンバーを助けることの出来る最高のコミュニケーションです。

軽微な問題点の相談を控える
明らかにヤバいものは勿論報告が必要ですが、「監査上そんなに重要じゃないけど一応報告したほうがいいかな?」くらいのレベル感のものを報告するのはやめましょう。

このタイプの主査はきっぱりとした取捨選択が苦手です

気にしなくていいよ…!」と言ってはくれますが、そのあとも「やっぱり深掘りした方がよかったんじゃ…」と心にしこりを残してしまいます。

これが積み重なるとメンタルが不安定になってきます。まわりまわって自分へのダメージにもなりますのである程度自分で判断してあげましょう。

ゼロディフェクト(Zero Defects)系主査

なんか必殺技みたいでかっこいいですよね…

【総括】
とにかく要求水準が高いことが特徴です。

普段の性格に傾向はあまり見られず、初見で話した時には気づくことが出来ません。

発覚するのは調書を見てもらったタイミングです。この時に自分の考慮不足らしきものをあまりにも指摘されていたらこのタイプの上司の可能性が高いです。



このタイプのチームのメリット
死ぬ気で調書を作りこむため自分のミクロの力が上がりやすい

オンリーワンにして唯一の最強メリットです

まるで強豪の部活の監督です

検討漏れや一貫していない論理、資料の確認不足を遠慮なく詰められるので死ぬ気で作業を行います。結果として自分が出来る作業の基準値のMAXが増えます。

デメリット
メタメタにやられるため萎える
シンプルに結構きつい言葉で詰められるため精神が削られます。逆に精神が削られるようなレビューを受けたらこのタイプの主査に当たっているかもしれません。

時間がかかる
学校で言うならば期末テスト一発方式です。平常点はありません。手続き中のコミュニケーションは関係なく調書の出来のみで判断されるため、完璧な水準の調書を作成しなければなりません。その為調書を作成に時間を要します。

また、基本的に「読めばわかる」という考えを持っているため、手続意味や資料の場所など「本人が頑張れば分かること」を聞かれるのも好きではありません。この傾向も調書の作成が遅くなる原因となります。

問題点の発見が遅れる
基本的にビビっているため、時間をかけて調書を作りこんでから調書をレビューしてもらうことが多いです。レビューの結果監査公判で、全然検討できていない部分が見つかることがあります。時間に余裕がない状況でこれが起こると一気に地獄になります。

これを防ぐには、①自分が成長するor②叱られ覚悟で早めに一回出すしかありません。


【このタイプの主査と仕事をするときに意識すること】
コミュニケーションをメールやチャットなどで行う
文章で自分がどこまで検討したのかアピールしましょう「○○分くらい調べたんですけど…」という表減を入れると、自分の頑張り+このままでは失うであろう時間を暗にアピールできます。

また、文章を熟読してくれる傾向にあるので長文を書いても嫌がられません。

調書一発勝負であることを意識する
オールorナッシングです。途中のコミュニケーションは基本的に意味を成しません。可能な限り詰め込みましょう。網羅的な調書を好む傾向にある為、思考の過程の記載を省いたり関数を消して値貼付を多用することはやめた方がいいと思います。

こちらの考えを明確に伝える
攻撃力が高い分、守備力が低いです。
基本的に間違ったことは指摘してこない傾向にありますが、従順になりすぎると仕事が無限に膨らみますので自分なりに理屈が通っている場合は反論するのも手です。こちらも手綱を握り返す意識を持つとある程度楽になります。

チームを抜ける
いつでも逃げていいんです。そのチームのアサインがあると気持ちが沈むくらいならば、何とかしてチームを抜けましょう。

チームを抜けたところで死ぬわけじゃないので、ある程度適当な感性で抜けちゃっていいです

省エネ先輩

総括

とにかく仕事量を最小にとどめようとする傾向にある人です。

組織としてみれば最も仕事が出来るタイプの人かもしれません。

気持ちも常にフラットで、仕事に対しても程よく適当な雰囲気を備えているので部下としても仕事がやりやすい傾向にあります。

やることを極限まで減らそうとするので、たまに監査の倫理観と葛藤の気持ちが生まれます。

【メリット】
部下としての作業量の負担が少ない
スタッフの作業量が多いということはチェックする主査の負担も大きいことを意味します。これを極端に嫌がるので、調書の内容がシンプルで少ないという傾向にあり非常に作業をしやすいです。

調書の手直しが少なく気持ち的に楽
デメリットと表裏一体なのですが、僕たちスタッフへの手間(指導)も極限まで減らそうとするため、あまりにも大きい穴が無い限り、レビュー段階で勝手に修正してくれています。その為、調書を1回納品したら終了になりタスクの残が残り難い傾向にあります。

【デメリット】
異常な点を発見すると嫌がられる
仕事が増える要素が発見されると嫌がります。上で紹介した2パターンの人たちは「見逃さなくてよかった…」という気持ちが先立つのに対し、「仕事増えるじゃん…」という気持ちが強い傾向にあります。よって監査を頑張った結果によって発見できたことを評価され難いです。

異常点に関する追加的手続は完全に振られる
追加的な検討が必要な要素を発見した場合(特に手続上の重要性の基準値よりも低い取引)、「その仕事は自分で増やしたんだから、自分で責任取ってやりきってね」というスタンスになります。おそらく本人的な基準に照らし合わせて、自分の仕事と他人の仕事を明確に区別してます

一度、「他人のタスク」として認識された作業は主査のサポートをほとんど受けられず独力で突破しなければならなくなるため気を付けてください。

成長のための気づきを得る機会が少ない
世の中よくできています。心理的負担が少ないということは、フィードバックが少ないということです。実際に調書を完成させ納品後に主査がレビューした後の調書を見てみたことがあるのですが、結構修正入っており禿げあがったのを覚えています

実際に修正前と見比べてみると調書の品質が良くなっていたので自分なりにその修正されていた箇所を分析しましたが、危うく機会損失をするところでした。

ある意味では、このタイプの上司の下で行う監査はもっとも作業感を感じるかもしれません

【このタイプの主査と仕事をするときに気を付けること】
早く調書を上げる
とにかく早く調書をレビューに回すことを心がけましょう。このタイプは「仕事が終わっていないこと」事態がストレスです。自分が気になった取引があったとしても、金額的に大したことが無ければスルーし、とにかく定められた手続きを終わらせることを優先させましょう。

些細な異常点を報告しない
やる必要のない作業が増えることをとにかく嫌います。一般的な監査の品質が保たれる範囲の異常点であれば報告しても面倒がられるだけなので、自分の胸にしまっておきましょう。自分がすべての作業を引き受けるほどの重要性と覚悟がある場合のみ報告しましょう

相談を共有のスペースで行わない
このタイプの主査は相談された事項を出来る限り検討したくないと思っています。その為共有のチャットやメールで相談してしまうと、場合によってはマネージャーやパートナーから追加の検討を命令されてしまいます。

これが起こってしまうと主査のメンタルヘルスは著しく削れてしまいます。作業が増える恐れのある相談は個別チャットで行いましょう

作業を減らせそうな提案があれば相談する
唯一といっていい、歓迎される相談です。その方法に論理的矛盾が無ければ喜んで採用してくれます。もし思いついたら相談してみて下さい。この際に、相手は「相談時間」事態にコストを感じている可能性が高いので出来る限り高品質なコミュニケーションと説得力をもった意見になるように意識してみて下さい。

事務所の人気者系主査

【総括】
明るく、口数も多いムードメーカータイプです。多少チームが暗い雰囲気で作業していても、その人が来れば雰囲気を持ち直すことが出来ます。

非常にチームの雰囲気も良く、のびのび作業が出来ます。このタイプの主査はチーム全体としてのパフォーマンスを最大化させることに最も気を配っています

そして、自分で状況をコントロールしたい欲求が他のタイプに比べて強めです。

報告を欠かして主査が想定外の事態を発生させてしまうことが地雷行為です。これさえ避ければ大丈夫です。

【メリット】
心理的負担が極限まで低い
このタイプの主査は部下のモチベーションが上がることによって監査の品質が高まり、結果的に自分の為になるという信念を持っています。よってきめ細やかなフォローや、質問にも丁寧に答えてくれるなど、部下目線では非常にいい上司となります。

部下を育成に積極的
もっとも部下の育成に価値を感じているタイプの主査です。
これは

・部下の好感度を稼ぐことにより自分のチームに優秀な人材を確保すること
優秀な部下が増えれば自分の負担を減らすことが出来ること

以上の2点が主な理由だと考えられます。

打算アリとは言え、部下目線からするとケアが丁寧な上司ということで問題ありません。

【デメリット】
嫌われるとキツイ
これに限ります。良くも悪くも影響力があります。仮に嫌われてしまうと直接的・間接的に自分の評価が一定程度下がります。

基本的にチームでやらかした場合、そのチームを抜ければリセット(?)できますがそうはいかないところがこのタイプの怖さでもあります。

【このタイプの主査と仕事をするときに気を付けること】
報連相をしっかりする
想定外の事態をとにかく嫌います。これは「他人の尻ぬぐいをするのが嫌い」という傾向を持つためだと思います。

同時に「責任感がかなりあるタイプ」でもありますので、一度相談しておけば「自分の意思決定が介在した」と捉えて自分の責任として事態を認識してくれます。

とにかく隠すという行為だけは取らないように気を付けましょう…!


可能な限り顧客に対しては礼儀正しくする
僕たち一人一人の行動を主査はコントロールできません。遅刻・身だしなみ・言葉遣い。この部分で主査が築いてきた信頼関係を損なうような行動をしてしまうと外されます。これはまさに上であげた「他人の尻ぬぐいをする」ことだからです。

とにかくサプライズを減らすことが重要です…!

まとめ

・主査のタイプに応じて、対応を合わせるのが吉
・とはいえ自分を貫いても結局、居心地のいいチームに行きつくからそこまで悩まなくても大丈夫
・上記のタイプを複合的に備えている人がほとんどなので意識してみるとなおよし、一律で当てはめてしまわないように注意